高還元SESは怪しい?~『エンジニアファースト』の欺瞞~

最近SES業界でトレンドとなっているのが高還元SES
SES企業では、(会社収益)=(受注単価)-(エンジニアへの給与)となっています。
この内エンジニアへの給与が高いよ!というのが彼ら高還元SESの主張です。

本当にそうなのでしょうか?

上記の計算式に当てはめて考えると、単純にエンジニアへの給与を増やすと会社の収益は減るわけです。
SESは受託や自社サービス運営会社と違い収益は受注単価にのみ依存するわけですから、これはどうしても変わらない事実です。
であれば、彼らはどうやって収益を上げているのでしょうか。

本記事では高還元を謳うSES企業のビジネスモデルについて調査しました。

結論から言うと……『弊社は高還元です!』と声高に叫ぶ会社には怪しい会社も少なくないということがわかりました。

以下、その理由について解説していきます。ぜひご覧ください。

『高還元SES』は実は高還元じゃない?

彼らが謳うのは『高還元』であって『高給・好待遇』ではないので、実際は言葉のトリックでどうにでもできてしまいます。
様々なパターンがあるので、順番に解説していきます。

1.計算式が恣意的

計算式をいいように操作して実際の給与を抑えるパターンです。
例えば求人では『単価の80%を還元します!』と言っている会社に単価100万円相当のスキルを持ったエンジニアが入社したとします。
スキル通り単価100万円の案件に入ったエンジニアくんは「月収80万円貰えるんだろうなあ」とワクワクしています。

しかし給料日に給与明細を見ると額面が640,000になっています。
あわてて上司に確認したところ、上司はこう言いました。

「確かに単価は100万だ。しかしそこから営業経費や雑費を抜いて80万。それに*0.8をした数字がお前の給料だ」

還元率の計算式は法律の規定などがありませんから、会社によって恣意的なものにされているパターンです。

2.スキルに見合わない高単価案件にアサインされるパターン

高単価の案件に無理やりアサインすることができれば、還元率が高くても会社に利益を残すことができます。
「単価が上がれば給与が増えるんだから良いじゃん」と思うかもしれませんが、
問題なのはエンジニアのスキルに見合っていない案件に無理やり送り込もうとする会社があることです。
エンジニアの意向を考えなかったり、案件の説明をちゃんと行わなかったりして、とりあえず現場に送り込みます。
結果エンジニアは自分に見合わない難しい仕事をすることになり、ストレスを感じてしまうことでしょう。

またこのような営業をする会社はおそらくスキルシートを改ざんしてスキルを盛っているため、取引先も騙しているということになります。
怒られるのはもちろん現場のエンジニアです。

3.経費を削っているパターン

(単価)-(給与)以外の部分で経費を削減するパターンです。
経費削減といっても、それが無駄なコストであれば良いことです。

この場合問題となるのは、そのコストカットがエンジニアへ負担をかけるものであることです。
例として以下のようなものが挙げられます。

  • エンジニアにバックオフィスをやらせる
  • 営業の人数を削る
  • 福利厚生がない
  • 研修などエンジニアのスキルアップを一切行わない

これらはすべてエンジニアの働き方に関わってきます。
手取りが増えてもその分負担が増えては元も子もありません。

特に一番最後のスキルアップ費用を削減することは、将来的なキャリアにもかかわってくることですので、目先の給与と引き換えにするにはあまりに大きすぎる代償であると言えるでしょう。

4.業務委託にするパターン

求人では正社員雇用を謳いつつ、実際には業務委託契約にされてしまうパターンです。
悪質な会社だと、知らない間に勝手に業務委託にされていることすらあります。

業務委託の場合、税金や社会保険を自分で払う必要があるため、見かけの額面が増えても実際の手取りは少なくなります。
雇用契約を結ぼうとしたら、急に「フリーランスとして契約しませんか?」と言ってくる会社があるそうです。注意しましょう。

高還元SES乱立の背景

以上、あの手この手でエンジニアを騙そうとする悪質な高還元SES企業の欺瞞を紹介しました。
なにがエンジニアファーストだよって感じですよね。
普通のSESよりよほど悪意を持って搾取しようとしている印象すら受けます。

そもそも、彼ら高還元SESはなぜ生まれたのでしょうか。

『高還元』をアピールするSES企業にお金でエンジニアを釣ろうとする意図があるのは明らかですが、その背景にはそれを求めるエンジニアの存在があります。

私はこのような、お金しか考えないエンジニアの態度にも問題があると思います。
もちろん給料が増えるのは良いことですし、それがモチベーションになって頑張れるという側面も確かにあるでしょう。

しかし、ビジネスの仕組みを理解しようとせず、単純に自分の利得だけを主張する。
そのような人とはWin-Winの関係が成立しません。

結果、まともなSES企業からは求められず、詭弁を弄す高還元SES企業に狙われてしまうのです。
そうした会社ではモチベーションも上がらず、スキルも上がらず、ますます悪い方向へ進んで行ってしまうでしょう。

本当にエンジニアのことを考えている会社へ入ることをオススメします。

入るべきSES企業はコレだ

では、どういう企業に入ればいいのでしょうか。
上に書いたような高還元SESの逆を考えてみると良いでしょう。

すなわち、

  • 契約内容が明朗で誠実である
  • 営業やバックオフィスにリソースを割いている
  • 還元率や給与などのカネだけではなく、スキルアップや将来性といった付加価値を売りにしている

といった会社がエンジニアにとって良い会社であると言えるでしょう。

そもそも、SES企業の本来の機能というのはピンハネではなく、エンジニアの育成案件とのマッチングです。
エンジニアのスキルアップを支援し、適切な案件にアサインする。
これらに対し、適正なコストをかけるのは当然です。

こうしたSES本来の機能を軽視し、ただ人材確保のために甘い言葉を求人に並べるような企業には注意すべきです。
自分のことばかり考えるあまり、よりエゴイスティックな会社に捕まることの無いよう、私たちエンジニアはよく考えて会社選びをしなければいけません。

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